第9章 恋愛論Ⅷ
「日向さんって、チカのこと好きなの?」
補講終わり、新田くんが京ちゃんの元へ寄る。
「新田くんに関係ないわ。」
「まじか、日向さん人気あるのにチカのものか。」
「ちょっと、勝手に決めつけないで。」
「チカなんておっさんじゃん、アレ、何がいいの。」
「馬鹿じゃない、すこぶるいい男よ、小出先生は。」
「ほら、やっぱり。」
二ヤッと笑う新田くん。
「京ちゃん、そうだったんだ。」
「・・・、」
京ちゃんの顔が赤くなる。可愛いな、おい。
しかしあの京ちゃんが・・・、10個以上も年上のチカちゃんを。あんなんでもチカちゃんは人気教師だ。どこか抜けてて、先生らしくないところもあるけれど。
新田くんがハア、と大きなため息をつく。
「男ども、もしくは女子も悲しむね。」
「・・・確かに。」
私も新田くんに賛同した。
京ちゃんはまるで日本人形のような女性だ。真っ黒な艶のある長いストレートな髪。白い肌、小さい顔、切れ長の目、薄い唇、その上、格好良い男前な性格。女子からも男子からも人気がある。
「新田くん、バラしたりなんかしたら」
「日向さん、俺はそんな馬鹿じゃないから、安心して。」
「・・・うん、」
その件に関しては、私も大丈夫だと思う。新田くんはそういう男だ。
「ただ、狙ってた女の子が1人いなくなって残念。」
「悪いけど、新田くんにトキメクことは、ないわ。」
「うそ、しょっく。」
「安心して、私年上好きなの、」
京ちゃんが足を組み、涼しい顔をして微笑む。その優雅な身のこなしは、ホントに同じ高校生なのか、と疑ってしまうくらい大人っぽく、見とれてしまう。
「あ、もちろん宮原さんも」
「お断りします。」
言葉を続けようとした新田くんに、それをやめさせた。
「だから、それドキドキする。」
「・・・新田くん、死ね。」
「宮原さん、狙ってる?俺を喜ばそうとしてる?」
「宮原、光の扱いわかってないね。」
今までずっと黙っていた久世が初めて口を開いた。