第9章 恋愛論Ⅷ
「あーっす、」
やる気あるのかないのかわからない声で、ボルドーのVネックにジーパンの学校には合わないラフな格好。私達の担任、数学担当、小出 政親(こいで まさちか)、通称チカちゃん、29歳。
「はい、それでは出席をとりまあす。」
語尾を伸ばすな、語尾を。
チカちゃんが一人ずつ名前を読み上げる。ざっとみて40人くらい。1クラス分の人数だ。
「安藤祐介」
「はい。」
「江川春名」
「はい。」
「久世茜」
「はい、」
「は?久世?なんでお前ここにいんの。」
先生が久世の名前で止まる。
「数学が出来ないからです。」
「そんなに先生の授業受けたい?」
「出来ないからです。」
「そんなに先生が好き?」
「出来ないから。」
「うん、いいよ。許す。」
無表情の久世にニコニコ微笑むチカちゃん。チカちゃんの許す発言、意味がわかりません。
「じゃ、続けまあす。」
そう言ってまた何人か呼ぶうちにまた止まる。
「日向京子、…ってなんで日向もいるの。」
「先生が好きだからです。」
「はい、大正解。皆、今のが正解だからなー。日向を見習うよおに。てことで、面倒になったので、あとは出席省略。いる、いる、いる、いる、はい全員出席。はい、授業始めまあす。」
チカちゃんは久世とは違うタイプのマイペースだ。