第5章 恋愛論Ⅳ
「く、久世さん、」
振り返ると、私の後ろにいつの間にかその人の姿。ニヤニヤする新田くんが久世に言う。
「久世、どの口がそれを言いますか。」
「宮原、光はストライクゾーン広いから、間に受けると痛い目見るよ。」
「久世さん、それはけなしてるんですか、それとも優しさ故の助言ですか。」
「さあ、どっちでしょう。」
久世が上から私を覗き込んで小さく笑った、ように見えた。
「久世、いいなあ、楽しそう。」
「用すんだなら帰れよ、部外者。」
「はいはい、部外者は消えまーす。」
降参するかのように両手を上げる新田くんが、「あ、宮原さん」と言った。
「うそ、じゃないからね?」
「え?何が?」
「綺麗になった、って。」
「あ、ああ、ありがと、う?」
「うん、正解、」
そう言って新田くんは微笑む。
「いい恋してる証拠だね。」
さすがモテ男子、新田光。女子の雰囲気の変化にはいち早く気づくってわけか。