第5章 恋愛論Ⅳ
「あっれー、久世まだ来てないの?」
「新田くん。」
「おっはよ~!新田!俺の親友、久世はまだ来てないぜ!」
「諸星、それ聞いたら久世が泣くぜ?(怒りを通り越して)」
「そう思う!?やっぱりそう思う!?久世ってばどんだけ俺のこと好きなの!」
「お前のそういう(ウザめな)とこだと思うな。」
諸星くんがすぐに話を横道に逸らすので、私が新田くんに聞いた。
「新田くん、久世になんか用だった?」
「あ、これ、返そうと思って。」
そう言って、現文の教科書をヒラヒラさせた。
「ああ、返しておこっか?」
「ありがとう、助かる。」
新田くんから教科書を受けとると、ジッと顔を覗かれた。
「な、なに、どうしたの。」
「いや、宮原さん、綺麗になった?」
「……は、はい!?」
言われ慣れなさすぎる言葉に驚いて、開いた口が塞がらないついでに、ビビって体を後ろに一歩下げてしまった。
「あらまあ、ひどいポーズだこと。」
恥ずかしげもなくサラッと私を褒めた新田くん。これだけでも、女性慣れしているのがわかる。
「…新田くん、そのセリフは高校2年生が同級生に言うセリフではありません。」
「そう?思ったこと言っただけ。」
「だとしたら光の目は節穴だね。」