第4章 恋愛論Ⅲ
そのまま顔を上げていると、図書室の扉が開いて、背の高い人が入ってくるのが見えた。
「あ…、先輩。」
なんて運命、1日に2回も出会えるなんて。(1回目は偶然なんかじゃないけれど)
「あ、宮原さん、」
橘先輩が私に気付いてくれる。すると、隣に座る久世が席を立った。
「あれ、久世、行っちゃうの?」
「うん。」
宮原、またね、と背を向けた久世に
「あ、りがとね!」と小声で言うと、少しだけ振り返って視線が合う。でも久世は何も言わずに図書室から出ていった。
久世なりに気を使ってくれているんだと思う。私と先輩に。