第4章 恋愛論Ⅲ
「宮原、熱でもあるんじゃない?」
いつの間にか私の隣に座って、分厚い本をペラペラ捲る久世。その視線は私に向かうことなく、愛する図書室の本に向けられる。
ゴールドの筆記体、私には何書かれてるかわからないタイトルのそれを頬杖ついて涼しい顔して読む彼。伏し目がちなその視線が、まつげの長さを教えてくれる。隣で見るとやっぱり久世という男は黙ってれば最高だ、なんて思う。
「どうしたの、読書なんて。僕みたい。」
「あ、うん、そう、久世が本読んで、一人で考える時間作れって言ったから、今やってみてる。」
「へえ、凄い進歩。宮原って成長早いんだ。」
そう言った久世と初めて目が合った。
なんでだろう。馬鹿にされているような言葉なのに、久世がそれを言うと取り立てて嫌な気はしない。
「へへへ。」
「その笑い方は頂けないね。」
「……。」
やっぱり久世は一言多い気がします。