第3章 恋愛論Ⅱ
ごみを捨てた帰りの階段は、上りなのに全くと言っていいほど辛くなかった。あんなに邪魔だったゴミ箱の大きさも気にならないくらい、私の心は寛容で。これが俗にいう恋愛マジック。
今なら久世から何言われても受け止められる自信がある。いや、むしろ自信しかない。
「きょ、きょきょきょ京ちゃん!」
教室に入ると一目散に黒板を掃除する京ちゃんの元へ行く。
「私、そんなに きょ、多くない」
「れ、冷静じゃいられなくって…!」
「何、先輩となんかあったの?」
「そ、それがさ」
京ちゃんに一部始終を話そうとしたところに、久世が教室に入って来たのが見えた。
「く、久世様!」
大きな声で叫んだ私に久世が露骨に嫌そうな顔をした。
「あなた様のおかげで、
私に素敵な出来事が起こったのです。
感謝致します、神様、仏様、久世茜様!」
「語呂が悪い」
「そこ?」
「突っ込むべきところが、
そこしかない」
「なんでよ、もっとあるでしょうよ、
素敵な出来事、気になるでしょ!?」
「…あー、諸星が何故息を吸ってるのか
と同じくらい気ニナリマス」
「おい、どうでもいいのがバレバレだな」
「上手くいったんでしょ」
「いや、上手くいったっていうかぁ~、
それはまだっていうかぁ~」
「諸々めんどくさいよ、宮原」
こんな感じで久世とは上手くやっていけそうです。