第3章 恋愛論Ⅱ
「何それ、なんでそこで終われたの?」
京ちゃんが私に迫る。
「え、なんでって、…何が?」
「それって橘先輩も
杏に気があるってことでしょ?」
「…まあ、ふふ、そういうことに、
なっちゃうの、かなぁ~?」
「宮原、とうとう頭イッたんだ」
思い出し笑いが止まらない私に、久世が本気の心配をみせる。
「久世さん、その優しさいらないです」
「そう?」
「それにしても、
久世くんよく機転きかせてくれたよね」
確かに。あの久世の行動がなければ、今の有頂天な私はいない。そこで1つの疑問が湧く。
「久世、なんで協力してくれたの?」
だってあの久世が。自分のことしか考えない、めんどくさがり屋で有名のあの久世が、私の恋愛ごときに協力?「ちゃんちゃらおかしいね」とか言いそうだし。
すると久世からはまさかの回答。
「ゴミ箱一生懸命抱えて、
好きなヤツに会いに行くみゃあが
健気で可愛かったから」
「……はい?」
「久世くん、それどういう意味?」
「日向さん、
女の子ってすぐ意味を問うよね」
「少しは夢をみてもいいんじゃない?」と京ちゃんに言う久世は以外とメルヘンなのか。
「女は答え(現実)を求めるものなのよ」
「へえ、それはある意味哲学かも」
「哲学?あら、素敵」
2人の会話についていけない。
「みゃあ、いつまで黙ってんの。
鼻の下、伸びてるけど」
「え、あ?う、うそ」
慌てて鼻から下を手で隠すと、久世がまた涼しく笑って席を立つ。
「先輩という大切な人がいるのに、
もう僕に浮気?」
その笑顔はどこか満足気だ。
「う、浮気とは何事ですか」
「ほら、また聞く。胸に手をあてて、
1人で考える時間を作ったら?
たまには本を読みなさい、本を」
哲学本好きの久世は、いちいち言うことが謎すぎます。