第18章 恋愛論XⅣ
「顔、イってるわ」
「ひいあっ!」
突然耳元でボソリと言われたそれに、体がのけ反る。
うふふ、と笑う彼女がいつの間にか私の隣にピッタリとくっついていた。
「きょきょきょきょ、きょうちゃん!」
「どいつもこいつも上手くいってるようで
私、吐き気がするくらい嬉しい」
「……、なんか、すみません」
「ち、」
舌打ちってあなた。
きょうちゃんは最近荒れている。私が久世と付き合うことになって少し経った頃から荒れている。まあ、その原因はわかっているけど。
「…きょ、きょうちゃんあのー…
「ひーーなたせんぱあーーい!」
私の声を男の子の大きな声が飲み込んだ。
その瞬間、眉を寄せた彼女が怪訝そうな表情を浮かべて。
「…杏、ごめん、ちょっと巻いてくる」
「え、ま、巻く?」
返事もせずに、陸上部のような綺麗な走り方で素早く目の前から消えた彼女。
きょうちゃんの走る姿なんて滅多に見れないぞ普通は。