第18章 恋愛論XⅣ
あれから諸星くんはサッカー部のミーティングとかなんとかですぐに出て行った。なぜわざわざ来たのかは謎だけど、それが諸星くんなのだ。
色々言っていたのに、結局久世は1人で全て完食してしまった。唐揚げ1つすら、諸星くんにもやらずに。
空っぽになったお弁当箱を抱えて実験室を出る。
「久世、大丈夫?」
隣で青ざめる彼を見て一応声をかけてみるが。
「ここで大丈夫なんて言ったら
宮原は安心しきってこの先も僕は
あの芸術作品を食べさせられるわけだから
自分の命を守るために言わせてもらうけど
実は今にも吐き散らかして死にそうだよ」
なんて冷静に言うから怖い。
「……す、すみません次回は…」
「次回もあんの?」
「だ、大丈夫!きっと上達してるよ!」
「みゃあの未来予想は当てにならない」
「何もお言葉を返せません」
「でもまあ」
教室の前で一旦足を止めた彼が振り向いて
「嫌いじゃないよ、
みゃあの黒い弁当で笑う時間は」
そう言って微笑んだ。
「…つ、次も楽しませるからね!」
「いや味で感動させろよ」
そう言って久世は先に教室に入る。
その後ろ姿を見て、つい口許が緩んだ。
ああ、私
久世のことが好きなんだなあ
なんて思って。