第18章 恋愛論XⅣ
「うっわ、なにこれ、真っ黒じゃん!」
私たちに近づいた諸星くんが弁当を覗き込んで大声で笑った。
「みゃあはやっぱり天才だよ
弁当ひとつで笑いがとれる」
「褒めてないよそれ」
「なになに、宮原が作ったの?」
「ですよ、乙女の弁当を笑われて
私は心折れてますよ」
「あははっ、一口もらいー☆彡」
と諸星くんが真っ黒の唐揚げを摘まんで取ると、その日焼けした腕に真っ白の手が伸びる。その速さに電光石火、とはこのことかと。
「何だよ久世え!俺食事「返せ」
久世が真顔で諸星くんの口に運ぼうとしていた私のソレを阻止する。
「………、あ、久世唐揚げならこっちにも」
彼に弁当を差し出すと、私の言葉に耳も貸さず「返せ」とまた諸星くんを見つめた。
「………、」
え、やだ、待って。
もしや、もしかしなくてもこれは、あの少女漫画の世界ではかの有名な「俺のために作った弁当だ」的な……
「やめとけ諸星、死ぬぜ?」
「マジで!?あっぶねー
止めてくれてサンキュ久世!☆彡」
だから愛妻弁当だっつってんだろ、という私の心の声は彼らに聞こえることもなく。