第3章 恋愛論Ⅱ
「あれ、宮原さん?」
声のする方を見ると、振り向いた先には
「た、橘先輩…!」
「こんにちは」と王子様スマイルで微笑む私の憧れるその人。
橘 有雅(たちばな ありまさ)先輩。同じ高校の3年生。
先輩の存在を知ったのは、入学式。当時2年生にして、すでにこの高校を取り仕切る生徒会長。壇上でのあいさつに、先輩のその容姿に心を奪われた。
ミルクティーのようなベージュ色の髪。色素の薄いグレーの瞳、高い鼻、日本人とは違う、その白い肌。先輩はお婆様がイギリス人のクォーターだ。
いい具合に日本人が混ざり合っていて、その目の色意外、言われなければクォーターだと言うことはわからない。しかし、王国とかの王子様衣装がとてつもなく似合いそうな人。
こんなパーフェクトな先輩に、憧れを抱いているのは私だけではない。
「こ、こんにちは…!」
先輩は時々、掃除場が焼却炉前の担当になる。
私はその曜日を把握しており、その日になるとうちのゴミ捨て当番から、その仕事を奪って先輩に会いに行く。
毎回行っていたら、さすがに覚えてくれたみたいで、名前で呼んでくれるようになった。すこぶる嬉しい。
「今日もゴミ捨て当番?」
橘先輩の視線が私の少し後ろを見る。
…あ、そう言えば久世と一緒、だった。久世と階段で話した内容を思い出して、先輩の反応を伺う。
「ん?どうしたの?」と何も変わらない優しい顔。
おうまいがっ!久世の言った通り!先輩なんにも思ってくれてない!やっぱりこんなこと知りたくなかった。
後ろで久世が笑う姿が想像できて、つい睨んでしまった。
「…あ、れ」