第17章 episode Ⅳ 新田 光
休み時間になるとバカみたいなでかい声で呼ばれる。
「ひーかーるー!」
「………、(…こいつあほか)」
俺を見つけきれずにキョロキョロする洸に、クラスメイトが「あれ見ろよ」とこそこそしたり、黄色い声があがったり。
なんでわざわざ目立つことを…、とまた洸にイラつく俺。その場を離れて洸に近寄ると、教室中を見回すその視線が俺にロックオンされて。
「あ、光!飯、買った?」
目が合うと、キラキラするその眩しい(うざったい)視線を俺に向ける。彼女じゃねんだよ、俺は。
「いんや、まだ」
いつものようにぶっきらぼうに答えて、教室の入口で2人話していると。「新田くん」とクラスの子達が話しかけてきた。
「どちらの新田くんだ」と言いたかったけど落ち着け俺。振り向く俺たち双子に「あ、そっか!」と笑う女子ら。
「なに?」
「あ、えっと、光くん、って呼んでいい?」
3人組の1人が洸をチラチラ見ながら俺に言う。
「うん、いいよ。中村さん」
「な、名前…覚えてくれたんだ!」
あ、いや、名札あるし。
「うん、で、どうしたの?」
「あ、う、うん、その…お兄さん?」
中村さん達が頬を赤らめて洸を見つめると
「光の兄貴の洸です。よろしくね」
と洸がふんわり笑った。
「ほんとにそっくり~かっこい~!」
「ふふ、ありがと」
洸の混じりっけのない純粋な真っ白の笑顔に、きゃー!!と女子が目の前ではしゃぎ出す。
出来ない、俺にこんなことは出来ない。
俺を抜きにして盛り上がる女子とそれに答える兄貴に、やっぱりこいつといると疲れる、そう思って何も言わずに教室を出た。