第17章 episode Ⅳ 新田 光
「はじめまして、新田 光です。
よろしくお願いします」
新しい教室で、40名ほどの生徒を前に淡白な、ただ名前を言うだけの自己紹介を終えると担任が口を開く。
「新田は隣のクラスに兄貴もいるから、
みんなよろしくな」
兄貴、のワードにクラス中が反応すると
「兄貴って、
新田くんは双子なんですかあ?」
クラスの男子が手を上げて俺を見た。
何も言えないでいると(正確にはこの質問にうんざりしていたから)、担任が無精髭の生えたたるんだ顎を触りながら答える。
「新田 洸、光るの文字に
サンズイ足してコウって読む。
お前ら間違えるなよ」
退屈な学校生活で、久しぶりの刺激が入ってきたと言わんばかりの好奇の目が痛かった。
こういうの、洸だったら。笑ったり、気の効いた一言だったり、上手くやってのけるだろうに。