第16章 恋愛論ⅩⅢ
「…あ、あのう久世さん、私たちって…付き合ってるんです、よね?」
その問いに、私と付き合ってるであろう目の前の男子は何も表情を変えない。
「え?なに、宮原って愛してる、とか毎日言って欲しい派なの?」
と顔を近づける。
「や、いや、違う、…いや言ってくれたら嬉しいけど」
「…ほう」
だからその、ほう、って。
その京男子みたいな、ほう、って。
いや似合ってますが。
久世が目を細めて近づいた。
「愛してるよ宮原、好きだよ宮原、可愛いね宮原、息してる姿が素敵だね宮原、ムダ毛すらいとおしいよ宮原「わ、わ、わ、わかったすんませんでした」
本気ではないと分かっていても、久世から出るその言葉は私を熱くさせる。
「僕に宮原のこと語らせたら右に出るものはいないぜ?」と得意気なこの人。
結局、付き合ってるかどうか、確信のついた返答はないままじゃないか。
「宮原が急に女子ぶったら僕が阻止するから安心して。」
「いや、そこは安心するところじゃあないよ、久世さん」
少しくらい、カップルの雰囲気を味わってもいいと思う。
自分の買ってきた紙パックのジュースを一口飲んで、私と目が合うと「なに?新手のクレクレ詐欺?」と言われた。ただ見つめていただけなのに!熱い視線を送っただけなのに!
……まあ、久世といるだけで楽しいから、そんなカップルぽいことなんて、どうでもいいか、と諦めたとき
「なに!なんでそんな面白いことになってんの!?」
と急に現れ出たのは愛すべきバカ。