第16章 恋愛論ⅩⅢ
「ほう」
久世がまた私に冷ややかな視線を送り、文学小説の一言みたいなセリフを吐く。
「今なんと」
その話し言葉は乱暴ではないが、隠れた迫力が出る。
「や、だから、今日から久世が私の王子「二度も言うな」
…あなたが聞いてきたんじゃないですか。
昨日、久世の家で確か、「みゃあが欲しい」と告白めいた事を言われた、はず。…確か。
つまり目の前で私に冷たい視線を浴びせるこの男前は、今日から私の彼氏なわけで。
「まさか今更僕に王子様キャラ設定付け加える気?」
と、さき程の私の発言に突っ掛かってくる。
「や、別に作者にそういう気はないんじゃないかと…」
「抹殺したいわ作者」
「く、久世さん、怖いです目が本気です」
ちょっとくらい浮かれてもいいじゃないか。
嬉しかったんだ、
まさか久世も同じ気持ちでいてくれたなんて。(え、大丈夫だよね。付き合ってないとか、そんなバカな話はないよね?)
久世のなにも変わらない(いやむしろ私に対して久世度がパワーアップしている)態度に、いささかの不安を覚える。