第15章 恋愛論XII
「凄いね、宮原凄く美味しそう。」
久世が私の出した、初めての手料理を前に賞賛の言葉を浴びせる。
「宮原にこんな芸術的才能があったなんてね。」
今だかつて、久世からこんな言葉をかけられたことがあっただろうか。
「…混ぜて炒めただけなんだけど…」
「へえ、ほんとに?凄いよね、混ぜて炒めただけで、枯れ葉色の食べ物が出来ちゃうなんて。」
お気付きだとは思いますが、彼は決して誉めているわけではありません。
「……も、申し訳ございません。」
「見てこれ、」ともはやその形も原形も留めていない物体を箸で持ち上げて私に見せる。
「こんなトマトのヘタみたいなウインナー見たことない。天才だね、みゃあは。流石。」
私は本当にこの人のことが好きなんだろうか。だとしたら相当なドエムなのか、という不安さえ覚える。
「……た、食べなくていいよ。」
「大丈夫、風邪で感覚という感覚、全てが痺してるから。」
なんなんだ、それ。