第15章 恋愛論XII
グレーのスウェットにネイビーのパーカーを着た久世。凄く久しぶりに会ったかのように感じた。 ほんの半日、会わなかっただけなのに。
「………」
「なにその顔。」
「え、ど、どんな顔ですか。」
「僕に会いかった、みたいな顔、」
「ば、ばかじゃないですか。」
「え?頭の出来も顔の出来も宮原より良くない?」
間違いありません、久世さん。
「…せっかく買ってきたのに、肉まん。」
「あ、そうだった。」
久世が思い出したかのように、言う。なんのために私を呼んだと思っているんだ。
「なんで休んだの?」
お陰で全く授業についていけなかったじゃないか。
「ん、風邪。」
「は!?風邪!?このむちゃくちゃ暑い夏に!?」
「……、繊細だからね。」
「久世、夏に風邪引く人ってね、バカなんだよ。」
「大丈夫、年中無休でほとんど毎日風邪だから。」
「久世さん、嘘が大胆です」
「…もう、キツいんだから早く家まで送って。」
「女子か!いや、女子は私だ!」
「宮原、うるさい。」
「…すみません、」
「ほら、歩けない。」
「は?」
「この手、察しなよ。」
と久世が私に手を差し出す。
「…久世さん、独りでここまで来れましたよね?」
「行きの体力はあったけど、やっぱり帰れないよね。」
「その理論謎です。頭いいなら配分考えてくださいよ。」
「だってほら、僕バカだから。」
「随分使い勝手のいいバカですね」