第15章 恋愛論XII
携帯を片手に途方にくれる私。コンビニを出て、久世に教えてもらった道を行く。しかし、極度の方向音痴に付け加えてほとんど来たことのない土地、方向感覚なんてあったもんじゃない。
すぐさま久世に電話をかけると、ワンコールで応答してくれる。
『……着いた?』
「久世、…迷った。」
『…は?』
「私、久世の家知らないのだけれども。」
『あ?そうだっけ、』
そうだよ、久世さん。私あなたのこと、結構何にも知らないからね。
『…今、どこ?』
そう言われて辺りを見渡す。
「なんかね…公園がある。ゾウさんの滑り台。」
『…うん、待ってて。』
言われた通り、その場で待つ。ここが久世の住む所なんだ、と今度はゆっくり辺りを見渡たした。
自分のことを全く話さない久世。ほんとに思う、ミステリアスとは久世のことだ。引っ越して来た理由も、どこに住んでいるのかも、家族構成も、これだけ一緒にいて何も知らない。
前に1度だけ、「久世はなんで引っ越してきたの?」と聞いたことがある。切れ長の薄い色した瞳を流され、サラッと口角をあげて「内緒」と言われた。それ以来、何だか久世に何も聞けなくなった。
電話を切って5分程経った頃に「宮原、」と呼びかけられる。