第14章 episodeⅢ 小出政親
チャイムを鳴らすと、「はい、」と涼しい声が返ってきた。
「俺、」
『…ふふ、誰?』
先生は俺で遊ぶのが好きらしい。男として、それはどうなんだ、と思うけど。…残念ながら、全然嫌いじゃない。って変態か俺は。
「…小出です。」
『どちらの小出さん?』
なんだよ、この焦らし。
「貴女の大好きな政親だよー(なんつって)」
『人違いです。』
「あ、おい、こら!嘘、嘘!」
インターフォン越しになにさせるの、このドエス教師。先生が無言のまま、俺の言葉を待つ。
『……』
「あ、けてよ。…渉さん。」
先生からの返事はなく、扉の鍵が開く音がした。
扉を開けると、風呂上がりなのか、まだ髪が少し濡れた先生が「いい子、」と言って招き入れる。
「…ほんと、意地悪だよね。」
「ちかが可愛いから。」
「嬉しくない。」
「…ご褒美、あげる」
そう言って、ゆっくり近寄り、首に手を回す。
「…先生、それ後悔しない?」
「後悔させてくれる?」
「いや、…俺神様だから。」
「なあに、それ。」と笑う先生が色っぽくて。神様の仕事、と言った自分を忘れそうになった。
「天国に連れてってあげる。」
「…ちか、」
その日初めて、先生が俺の物になればいいのに、そう思った。
こんなの、神様失格だ。