第14章 episodeⅢ 小出政親
教室についてすぐカバンを置いて三笠に言った。
「三笠、俺上行ってるから。」
「ん、了解。」
「政親今来たばっかじゃん。」
とトキヤが笑う。
「浅井にまた言われるよ?」
心配するシュンに大丈夫、ありがと、と笑った。
俺は毎日のように授業をサボっては「上」に行く。カッコつけたように言ってるけど「上」とは屋上のことだ。
背中を向けた俺にシュンがいつもの小さな声で何かを言いかける。
「チカ、タバコは」
振り向くと心配するような顔のシュンがいて笑った。
「シュン、わかってる、吸わないから。」
「ん、」
「シュン、お前政親の彼女かよ。」
「うるさい、馬鹿トキヤ。」
「あー!また馬鹿って言ったあ!
シュン!馬鹿に早くこれ教えろよぉ!
わかんないんだよ、分数!」
「…そこは認めるんだな、トキヤ。」
呆れたように笑う三笠にもう一度目配せだけして、「上」へ向かった。