第14章 episodeⅢ 小出政親
「まあくん?」
「え、ああ、なあに?」
俺よりも20センチは小さいその子が、マックのカウンターに座って、俺の左腕を両手で抱き込む。こら、柔らかいの当たってますって。
「ゆな、今日暇だなあ。」
そう言って自分の小ささを武器に上目遣いで俺を見る。
朝10時。目の前の窓ガラスには仕事中の足早に行き交う人たち。
朝マックしようと店に入ったら「サボり組ですか?」と他校の制服を着たこの子に話しかけられて今に至る。
「ゆなちゃん、あのね、朝マック中にしかも初めて会った男を誘わないの。」
「うん、わざと。」
「せめて胸は当てないの。」
「うん、わざと。」
こら、貴女のお父さん悲しむぞ。
「こうすれば、まあくん断われないでしょ?」
「ゆなちゃん、可愛い顔して計算が凄いよ。」
「で、ゆなと遊んでくれる?」
「明日ね。」
「えー今日がいい。」
「今日は放課後、補講があんの。」
「まあくん真面目かよ。」
「こら、かよ、とか言わない。」
「じゃあ明日、たくさん楽しいことしようね。」
俺は女の人から遊ばれるたちなんだろうか。