第13章 恋愛論XI
砂浜を離れてコンクリートの道に出る。コンビニのようなものはない。ただ2つ並んだ自動販売機を見つけた。
「えっと、ファンタ・・・それに京ちゃんとチカちゃんと・・・」
そっか、久世は篠崎さんと読書中か。
自分の分も含めて4本、適当にボタンを押した。ガタンとジュースの落ちる音がして、それを取ろうとかがんだ時に丁度、道路を挟んで向かい側に大きな建物があることに気付いた。ガラス張りのその建物の中には、大きな本棚がいくつも並んで、椅子に腰かけて本を読む人達の姿。
これが図書館、か。
その建物の中に、久世の姿を見つける。
「……。」
凛と整ったその横顔。見覚えのある光景。学校の図書室を思い出した。あの時は隣に私が座っていたのに。
チラチラ久世の顔を見ながら本を読む篠崎さんの姿を見てそう思った。
…な、なんだこれ。篠崎さんは何にも悪くないのに!私今、ものすごく嫌な女だぞ!ごめん、ごめんね篠崎さん…!久世なんかにヤキモチ妬いてごめ…
ん…?や、きもち…?
ヤキモチだなんて全くもっておかしな話だ。あれは好きな異性に対するものであって、私が久世に抱く感情では、決してない。
自問自答を続けていると、手が滑って諸星くんのファンタを地面に落としてしまった。ゆっくりゴロゴロと、ペットボトルが転がっていく。
「………。」
私が、久世を…?まさか。
「みゃあ?」
その声に驚いてビクッと肩が上がる。顔を上げると、少し息を切らす久世が目の前にいた。
「………、」
「…なに、してんの。」
久世が転がったファンタを拾う。
「あ、えっと、」
いきなり現れたその人に驚きが隠せない。
なぜ、さっきまで涼しい顔して本を読んでいたはずなのに。