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久世くんには恋愛論を

第13章 恋愛論XI





「寂しいの?」




 隣の京ちゃんが私を覗く。



「え!?さ、寂しい!?」
「うん、顔に書いてある。」
「い、いやいやいやいや、ありえんでしょ。」
「なんで?」
「な、なんでって…」



 久世に…?いや、だって私はこの間まで先輩のことが…。





「杏、好きの気持ちなんて、気付いてしまえばあっという間よ。」
「…京ちゃん、経験談ですか。」
「さあ、どうでしょう。」





 白い肌に黒いビキニを着た京ちゃんが、潮風で涼しげに髪をなびかせる。いつ見ても京ちゃんは綺麗だなあ。これもチカちゃんのお陰なのだろうか。
 そんなことを思いながら京ちゃんを見つめると、それに気づいた京ちゃんが口角をあげる。





「私、フラれたよ、先生から。」
「え!」
「好きの気持ちも、ダメだって。」
「……そんな、」



 久世の言った言葉を思い出した。



『 それが小出の仕事だから。 』



 先生が京ちゃんにキツいことを言ったのは、京ちゃんを守りたいから?




「でも私、諦めないよ。」
「……。」
「諦められないよ、あんな理由じゃ。」
「…理由?」



 京ちゃんに続きを聞こうとした時、




「宮原、頼むから諸星の相手してくれ。」



 疲れた顔のチカちゃんが私の隣に座り込んだ。その後ろ、遠くの方で諸星くんがビーチボールを持って「チカ弱え~!」と大笑いしている。




「お疲れ様です。」
「もうね、20代後半には耐えられんよ。」
「バトンタッチ、行って参ります。」
「ちょっと、杏、待って。」

 
 京ちゃんが腰を上げようとしたので、それを止めた。


「あ、チカちゃん、京ちゃんのことよろしくね。」
「はいはい、」
「………、」




 二人を砂浜に残して、私は諸星くんと新田くんの元へ駆け寄る。京ちゃんとチカちゃんの間には、私一人ぶんの距離。





 人の気持ちって、なんでこんなに難しいんだろう。




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