第13章 恋愛論XI
久世の発言に篠崎さんが私を見つめる。その視線はどこか寂しそうで。
「な、なんでですのよ。」
と挙動不審になってしまうくらい。
「いいの?図書館行っちゃって。」
薄い水色とわか草色の南国風な柄の入った海水パンツ。爽やかな色合いのそれは、派手が嫌いな久世にとても似合っている。その上から羽織るグレーの薄いパーカーから、細身だけどしっかりついた腹筋の割れ目が少し見えると、さすがに目のやり場に困った。
て、男の裸見て赤面する私は変態か。
「だ、だだだ大丈夫ですので、いってらっしゃいませ。」
「鼻血。」
「ええ!?」
慌てて鼻を抑えると、「うそだけど」と笑われた。
「お願いだから、出血多量で死なないでね。」
「はい、気をつけます。」
「はい。」
久世がいつもの涼しい笑いで頷いた。
「久世ぇ!篠崎さんにやらしいことすんなよぉ!」
「諸星、軽く溺死でもしておいて。」
「やだ!死因の限定!?俺頑張る!」
「さ、篠崎さん、バカはほっといて行こう。」
「あ、え、はい…!」
みるみるうちに小さくなる久世と篠崎さんの後ろ姿。横顔がチラチラ見えると、唇の動きで何を話しているのか、大体想像がついた。
「暑くない?」
「あ、暑いです!」
「ね?もう僕溶けそう。」
「あはは、」
なあんて、言ってるに違いない。