第2章 恋愛論Ⅰ
教室の外から叫ぶのは新田 光(にった ひかる)くん。隣のクラスの男の子。
久世とは違う、人工的なその明るい赤茶色の髪の毛は、お洒落にほどよくセットされている。制服の着方1つとっても、カッチリしすぎず、ゆるすぎず。ほどよい着こなしで、きっと私服もお洒落なんだろうと連想させる新田くんは、どこか余裕のある人だ。
久世が引っ越して来る前まで、この新田くんがうちの学年ではキャーキャー騒がれていた。もちろん今でも新田くんのファンは多いが。
しかしなぜこの2人に交遊関係が成立したのかわからない。久世は引っ越してきたばっかりで、ましてや新田くんは隣のクラスなのに。
「無論、断る」
「なんでよ、」
そしてわからないこと、その2。久世は新田くんのことを名前で呼ぶ。
「光に貸したら落書きのせいで
教科書が再起不能になる。
見ろ、この数ⅡBの無惨な姿を」
教科書の端を人差し指と親指で汚いものを扱うように持ち、新田くんに見せつける久世。
「俺の芸術性を見せつけて、
さらに尊敬の念を埋め込もうと思って」
「お前のクソな芸術性を見せつけるために
犠牲になる数ⅡBの気持ちも考えろ、カス」
「新田!ズリいよ!
久世、俺も名前で呼んでみろよ!
ほらっ、さあ早く!」
「キラキラ馬鹿に名前なんてありました?」
「照れてる!やだ、久世が照れてる!」
「光、暇なら一緒にこのバカ殺る?」
「久世、いいなあ、楽しそうで」
この学校には少々イカれてる生徒が多いようです。