第12章 episodeⅡ日向 京子
『こうして、杏とも友達になれ、学校生活が楽しくなったのも、ひとえに先生のお陰だと思っています。今では男子とも仲良しです。あのうざったい諸星くんの相手まで出来ます。先生、ありがとう。これからも愛しています。』
「…………、」
「終わりです。」
「うん、日向、俺は反省文を頼んだよね、確か。」
放課後の屋上、先生が頭を抱えながら煙草を吸う。
「これは、一体何だろうか。」
「すみません、思い出に浸ってしまいました。」
「うん、そうだね。反省してないよね。」
反省。私は何を反省したらいいのだろう。
「反省する理由がありません。」
「日向、そこだね、問題は。」
「はあ、」
「お前ね、いい加減、やめなさい、変な冗談は。」
先生が言う「冗談」、それは私の純粋な「気持ち」。私が先生を意識するのにあれから時間はかからなかった。初めて異性に感じた、特別な気持ち。これが「好き」ってことなんだと知るまでには時間がかかったが。
「…冗談、のつもりは一度もないですが。」
先生が私を横目に見て、はあ、とため息をつく。
「だったらなおさら、やめなさい29のおじさんなんて。」
「……、」
「いるでしょ、もっと若い男子が!あなたの周りには!」
「残念です、私年上好きなんです。」
「…先生はやめなさい。」
「先生じゃなかったらいいんですか。」
「え、」
「35歳のサラリーマンだったらいいんですか。」
「…いや、それもダメだな。」
「……、」
「おい、喜ぶな。そういう意味じゃないよ、ばか。」
「すみません。」