第12章 episodeⅡ日向 京子
「日向、どうしたらわかってくれんの?」
先生が正座をする私の前にあぐらをかいて首を傾ける。小出先生、ダメです、そういう態度がいちいち好きなんです私。
「…先生と、どうなりたいとか、願ってません。」
わかってます。この気持ちは届かないってわかってるんです。先生にとって私は、一人ぼっちで馴染めない、気にかかるただの生徒にすぎないことくらい、わかってるんです。
「初めて好きになれたんです。ただ、好きでいたいだけなんです。」
それだけでいいんです。
「日向、俺はお前達を守る教師だ。」
「……。」
「お前の気持ちが真剣だから俺も真剣に返す。」
「好きでいることも許せない。」
「…どうして。」
「日向、俺といても沢山悲しいことが待ってるだけなの。」
「そんなの、」
「わかるよ、」
私の言葉を先読みした先生が遮る。
「俺が、そうだったから。」
先生が真っ直ぐに私を見つめる。
「俺が高校生の時、好きになった相手は先生だった。隠しながら付き合ったけど、やっぱり上手くはいかなくて。」
「日向にその思いをさせるなんて、ただのバカだよ。」
そう言って悲しそうに笑う先生。そんな顔されたら、諦めたくても諦めきれません。
「…フリ方が下手くそ過ぎます。」
「慣れてないからね、」
この日初めて先生の過去を知った。