第12章 episodeⅡ日向 京子
ぼう、っと眺めていると「あちぃー」と言っているであろう本人と目が合った。
「………、」
こういう時、どうすればいいんだろう。少し困った瞬間、先生の顔が笑顔になった。
「ひなたあー!お前も来いよお!」
汗だくになる先生が笑顔で私に大きく手を振る。周りの男の子達の顔が慌てだすのを見て気付いた。先生、皆が迷惑だと言っています。
「結構です。」
「なんでよー。楽しいよ!」
「数学の宿題、終わってません。」
「あ、いいよーやんなくて!」
おい、そこはちゃんとやれよ不良教師。
「ほら、早く!」
「……、」
「あ、おい!宮原!お前日向連れてこい!」
先生が近くにいた女子に指を指す。
「チカちゃん、私はあなたのパシリじゃないよ。」
「行ってきてよ、たのむから、宮原様。」
「うん、よかろう。」
「お前、優しいな。」
「うん、数学苦手だから。」
「全部内申点で評価しとくね。」
「だから好きよ、小出先生。」
そんな会話をする女子が私の方を見る。先生と同じように大きく手を振る彼女。
「日向さあん、はじめましてー。お迎えに上がりますー。」
宮原、杏。たしか隣の隣のクラスの子。まさに明るいフレンドリーな女の子。そのフレンドリーさは媚びを売るようなものではなく、裏表のない、素直な親しみやすさ。こんな私でも宮原さんにはなぜか好感が持てた。