第12章 episodeⅡ日向 京子
「半分、貸して。」
「…え?」
「職員室だよね?」
「…あ、ありがとう…!」
そう言って目を大きくさせた彼女の右胸には「大空」と書かれたプレート。
大空…、何さんだっけ。たしか…や、や、や…だめだ、思い出せない。諦めて彼女と会話をすることにした。
「今日、日直?」
「う、うん。」
「もう一人は?」
日直は二人で回す。この間は私がすっかり忘れていて任せっきりになってしまった。これはその時のお詫びでもある。
私の質問に小さな肩がまた少し下がって、さらに小さく見えた。
「か、帰っちゃったみたいで。」
その人も私と同じで忘れていていたのだろうか。
「…そう、」とだけ返事をすると、
「…いつもそうなの。私、こんなんだから。」と小さな女の子は悲しそうに笑う。
忘れているのではなく、わざとこうなったかのようなニュアンス。…つまり、押し付けられるって、ことだろうか。
その時、ちょうどあの時の光景を思い出した。
『日向さん、日直なんだから、当たり前じゃない?弥生、そんなビクつくことなんてないよ。 』
『…ゆ、ゆいちゃん、』
『……』
『弥生ばっかりがすることじゃない、日向さん に行かせなよ。』
そうだ、彼女の名前は