第12章 episodeⅡ日向 京子
先生が私の机に腕を置いてしゃがみこむ。椅子に座る私の方が視線は高くて。下から私を見上げるようにジッと見られた。
「そっかあ、そっかあ、」
「なんですか。」
「日向は学校嫌いなのかあ。」
うんうん、と下を向いて頷く先生。それは私の役目じゃない?と思いながら、この人はちょっと変わった人なんだと確信した。
すると、頭を揺らしていた先生が、突然私の名前を呼び動きを止める。
「日向、」
そしてゆっくり顔をあげてニッコリ笑った。
「任せとけ、」
「はい?」
「俺の全身全霊をお前にかけてやる。」
「…は、い?」
「お前が、学校楽しい、ってなるように俺が頑張るって言ってんの。」
「は、はあ。」
小出先生が「よっ、」と言って元気に立ち上がる。
「覚悟しとけよ、」
そう言って私の髪の毛をもみくちゃにし、「わっはっは」と漫画のような笑い声で、教室からあっという間に出ていった。
さっきと同じ。また私は取り残されて一人ぼっち。
「…な、なんなの一体。」
でもさっきのそれとは違う。ぐじゃぐじゃになった髪を手で押さえると、まだ先生の手の感触が残ってることに気付いた。セクハラじゃないか、こんなの。
そう思うと、頭の中の小出先生が「ばっか、これはスキンシップだっつーの。」と膨れっ面して出てきた。…先生なら言いそう。
「…ふふ、」
妄想して一人で笑う自分に驚いて、慌てて口を抑えた。…なんだろう、想像でも先生が笑うと、少しだけワクワクするようなそんな気持ち。