第12章 episodeⅡ日向 京子
ある日の放課後、帰ろうとした時に知らない男の子から名前を呼ばれた。「話があるんだ、」と言われ教室を出て二人きり。
男の子がゴクリ、と音が聞こえるくらい喉を鳴らし、私をジッと見つめる。
「日向さん、入学した時から、好きでした。」
そうか、これは告白か。
「……」
「……あ、えっと、」
「なに?」
「…だめかな、」
だめかな?この人は何をだめか、と聞いているのだろう。…わからない。私も同じ気持ちか、ということ?そういう意味で言うと、今日の今日まであなたのこと知らなかったわけだし、好きだという感情はないし、むしろ初めましてが正しいわけだし、
「……、」
「……やっぱり、いいや、ごめん。」
そして誰もいない放課後の廊下に一人取り残された私。なんだか、勝手に振られた気分になった。
何だったの、一体。