第12章 episodeⅡ日向 京子
「サンキュー、集めるの忘れてたわ。」
と私からプリントを受けとってニッコリ笑う先生。名前、何だっけ…。
「小出、」
「え、」
「小出政親、鯉、で?と覚えなさい。」
その人は鯉のように口をパクパクさせて、言った。
「覚えた?」
「…こい、で先生。」
「うん、バッチリ。」
そしてまたニッコリ微笑む。
「…なんで担任でもないのに私の名前を」
「え?日向って、日向っぽいから。」
「は?」
そんなこと言われたことない。どちらかと言うと日陰っぽい気がします。
「ほら、髪の毛、艶々してていつも日が当たってるみたい。」
「…はあ、」
「日向もやってみなよ、名字とその人のイメージを勝手に作んの、したら覚えるから、名前。」
なんで知ってるんだろう、名前覚えるのが苦手なこと。
「…そのお陰で先生のイメージ、鯉ですけど。」
「え、それは嫌。」
大人のくせにいじけるような顔をする、小出先生に笑ってしまった。