第12章 episodeⅡ日向 京子
中学の時からそうだった。必ず話し掛けられる時、ああやって下を向くか、強く物を言われるか、そのどちらかだ。理由は全部、私にあるんだと思う。
高校一年生の春。入学して2ヶ月も経つと言うのに、私にはまだ、お昼ご飯を一緒に食べる友達がいない。元々、高校生活に何も期待していなかった私は、まだクラスメイトの名前すらまともに出てこない。
「失礼します。」
そう言って職員室に入る。
「あの、」
「どなたに用事ですか?」
そう聞いてくれたふくよかな女性の先生に、1年生の数学担当の机を聞こうと思ったが、名前が出てこない。
「あ、…えっと、」
「ど、な、た、」
一文字ずつ言わなくても…思い出せないんですもん。諦めようとした時。
「あ、日向、プリント持ってきてくれたの?」
私名前を呼ぶ男性が立ち上がって、右手で、おいでおいでをする。私はふくよかな先生に一礼して、その男性の元へ小走りで向かう。