第12章 episodeⅡ日向 京子
「ひ、日向さん、」
「なに、」
「このプリント…先生に提出してもらっても、いい?」
クラスメイトであろう女の子が持っているのは、今日提出期限の数学の宿題プリント。私はジッとそれを見る。こんな小さな子が持ったら、ピラッピラのプリントが凄く重そうに見えるわ。
「…あ、私ねっ、部活でっ、だから、日直の日向さんに手伝ってもらおうと、思って…!」
ああ、私今日この子と日直だった。
「わかった」と返事をしようとした時。
「日向さん、日直なんだから、当たり前じゃない?弥生、そんなビクつくことなんてないよ。」
「…ゆ、ゆいちゃん、」
「……」
「弥生ばっかりがすることじゃない、日向さんに行かせなよ。」
プリントを持つ女の子の隣には、少しだけ背の高いポニーテールの女の子、この子もたぶんクラスメイト、だったと思う。
はい、その方の言う通りです。私にやらせてください。弥生さん。
「…貸して」
「あ、」
重そうに見えたそれは、物凄く軽かった。