第11章 episodeⅠ橘 有雅
高校二年になって、生徒会長に立候補した。学年で成績もトップを維持したせいか、簡単になることが出来た。生徒会に入ったのは、父親への小さな仕返しだ。
あの人は「また無駄なことを、」なんて言うに決まってるから。
「では、本校の生徒会長である、橘有雅くんから一言。」
二年の僕が新入生に説教じみたことを言う時間。
「皆さん、まずはご入学、おめでとうございます。」
壇上から見る一年生は目が輝いていた。未来に希望を見た目、憧れの場所へ足を踏み入れた感動、それがヒシヒシと伝わってくる。僕にはそんな時なんて一度もなっかた。
「僕がお伝えできるのはひとつだけです。」
「無駄なことなんてない、人から何を言われても、自分を信じてください。自分の居場所を、素直になれる場所を、ここにいる全員がこの学園で見つけられたらと、そう願っております。」
「・・・短くはありますが、これをもって入学のあいさつと代えさせて頂きます。ご静聴、ありがとうございました。」
パチパチと盛大な拍手をくれる生徒たち。こんなもの、僕に貰う資格なんて、ない。
壇上の階段を一歩ずつ下りながら思う。
これは自分自身に言ったセリフなのかも、しれない。