第11章 episodeⅠ橘 有雅
無事に高校に受かってすぐに、鈴音に連絡した。
『はい、橘です。』
「・・・すず、久しぶり。」
『・・・お、にいちゃん!?』
「よかった、母さんが出たらどうしようと、」
『・・・うん、ママはお茶会だから。・・・元気?』
「うん、元気だよ。すずは?」
『元気、』
「そ、っか。」
しばらく静かな時間が流れる。でもそれはいやな沈黙ではなくて。
「・・・僕、受かったから、」
『え?』
「高校、受かった。」
『・・・よかっ、たぁ・・・』
「うん、」
なんとなくすずが泣いている気がした。それが嬉しくてなのか、なんなのかはわからないけれど。
「先に待ってるから、ここで。」
『・・・うん、おめでとう、お兄ちゃん。』
「ありがとう、」
そう言って僕たちは久しぶりの電話を切った。