第20章 それぞれの信じる道
「一君!!」
「…。」
一君は、境内に一人佇んでいた。
こちらには目を向けずただ、上を見上げていた。
…絵になるなぁとか違うこと思ってないからな!?
「…何度目だろうな。こうして京で見る桜も。」
「さく、ら…?」
ふと見上げると、満開の桜に目が行く。
「時が映ろう中で、様々なものが変わっていく。世の動きも、思想も…そして、この新選組も。」
「…変わったから…ここを…新選組から去るのか…?」
サァ…っと、風が吹き、桜が舞う。
見上げる枝からも花びらが零れる。
「それでも、何もかもが変わってしまうわけじゃない。」
「俺は…、変わらないものをこそ、信じている。」
「変わらない、もの…。」
言った言葉の意味が何なのか…。
答えを導けないままの俺に、一君はこちらを見たまま少し微笑んだ顔を戻し、そのまま歩み去る後ろ姿を見送った。
その日の午後。
俺は、平助と千鶴ちゃんが並んで縁台に座って話しているのが見えて、思わず隠れた。…なんで隠れたんだろ、まぁいいや。
「うまく言えないけど、オレは、この国のためには何が必要なのかってことを見てみたいんだ。だから、今回は伊東さんについて行く。」
「平助君…。」
「でも、一つだけわかってくれ。オレは、みんなのことが嫌いになったわけじゃない。おまえと離れるのだって───。」
「寂しくないと言ったら…嘘になる。」
平助…もしかして千鶴ちゃんのこと…。
「…これ以上聞くのは、野暮ってもんだな…。」
俺は、踵を返し元きた道を戻っていった。