第21章 自身の秘密
「ごめんね、お千ちゃん。」
「ううん、いいのよ。嫌がるふたりを、無理矢理連れていくことは出来ないもの。」
千鶴ちゃんを見て、俺を見た千姫。
その瞳は、少しばかり寂しさを帯びていた。
「ひょっとしてここを離れたくない理由でもあるの?誰か心に想う人でも?」
「えっ、あ、あの...。」
「い、いや、別にそうゆうことじゃなくて、だな...!」
「ふふっ、くれぐれも気をつけてね二人とも。あ、そうそう。山中さん。」
何かを思い出したように俺の方を見やる千姫。
「ん...何?」
そう言って手渡された紙をもらう。
「貴女の心の準備が出来たら、連絡してね。まだ、伝えきれていないこともあるから...。」
「...わかった、ありがとな千姫。」
本当に、これで良かったのか...。このままここに残っても...。それでも、俺は、ここが好きだ。
”誰か心に想う人でも?“
そう問われた時、俺の頭に浮かんだのは────。
「潤、戻ろう?」
「あ...うん。」
どうして、あの時左之さんが...。
俺がこの気持ちに気づくのは、きっとあと少し。