第19章 眠れぬ夜に
それから二ヶ月が経った慶応三年の三月。
「…寝れねぇ…。」
布団の中で何度も寝返り打つけどどうにも寝れない。
「千鶴ちゃん起きてるかなぁ…。」
本当はダメだけど、千鶴ちゃんと少し話しよう。
起きてなかったら大人しく戻って寝る。
ヒタヒタ…
こんな時間に起きてんの俺だけなんだろう。
しんと静まり返ってる。
土方さんにバレなきゃいいが。
「…あれ、千鶴ちゃんの部屋の障子が…。」
不思議に思った俺は部屋を覗く。そこには、今まさに斬りかかろうとしている…羅刹の姿が目に入り。
「千鶴ちゃん!!!」
俺は咄嗟に千鶴ちゃんとの間に滑り込み、庇う。
刃はもちろん間に入った俺を狙うはずで。
ザシュッ…
「ぐっ…ぅ…!」
右肩を斬られてしまった。
「あ…潤!?」
「いてて…千鶴ちゃん、怪我ねぇか?」
「私は大丈夫だよ!それより潤が…!」
「ヘーキヘーキ…こんなんかすり傷だよ。」
斬られた肩口を押さえながらこちらも刀を構える。
でも、何故かおかしい。
斬られた時はすげぇ痛かったのに今は痛みが無い。