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日常から非日常へ 【薄桜鬼】

第18章 島原でのひととき


それから一ヶ月後の慶応二年、十月。
俺達は夜の島原を歩いていた。

「すっげぇ…やっぱ昼間通るより夜の方がキレーだなぁ…。」

軒を連ねるたくさんの店、流れる三味線に浮き立つような空気…。路地行灯で足元までほんのり明るい街に俺はワクワクしっぱなしだった。
でも、千鶴ちゃんはどことなく遠慮っつーか、気後れしてる感じ。
まぁ…無理もないよな…ってか、俺が順応力高すぎるだけ?

「単に図々しいだけってこともあるんじゃない?」

「…また人の心勝手に読んだな、総司君!」

「読まないでって言われてないもの。」

「それは屁理屈って言うんですー!」

俺と総司君がぎゃいぎゃい言ってると、

「こちらに来てまで大人しく出来ないのか、総司、潤。」

一君に怒られた…俺も悪いの!?

「まぁまぁ!ところで、左之、おまえはほんとによくやった!まさか、報奨金でみんなにご馳走したいだなんてなぁ!」

新八さんが上機嫌な声で言うと、総司君が笑った。

「新八さん、褒めるならそこじゃなくて、制札を守りきったってところじゃないかなぁ。」

「それは、もちろんなんだがな!」

新八さんが言ってるのは、先月の制札警護のこと。
幕府への貢献が認められて、左之さんは数日前に会津藩から報奨金をもらったんだ。
それで今夜は皆で一緒に島原へやってきたんだ。

っと、新八さんが目当ての店を見つけたみたい。

「さ、今夜はおごりだ!目一杯飲んで、日頃の憂さを晴らしてくれ!」

「てめぇ、人の金だと思って。」

左之さんの意見はごもっとも。

みんなが暖簾前で一度立ち止まりながら言葉を発し、中へ入っていく。
俺も土方さんの後を追うように入っていく。

「やっべ、なんか緊張してきた。」

千鶴ちゃんは少し入るのを躊躇してたみたいだけど、一君に促されて店の中へ入ってきた。

「君も千鶴ちゃんみたいな遠慮があればねぇ。」

「ちょっと、総司君!どういう意味だよそれ!」

「そのままの意味だけど(笑)」

「何だとー!」

「てめぇらはちっとは落ち着きやがれ!」

土方さんに怒られた…。
ちくしょう、総司君のオカズなんか食ってやるぞ。
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