第14章 不思議な少女
「けほっ…こほ…。」
突然、総司くんが咳き込み始めた。
「そっ、総司くん?」
「沖田さん…?大丈夫ですか?」
俺と千鶴ちゃんはその場にしゃがみこんだ総司くんを心配し声をかける。
でも総司くんは大丈夫だよって笑ってたけど咳は中々止まらない。
そんな中、総司くんが顔をあげ狭い通路に視線をやる。
不思議に思った俺達は総司くんと同じ方向に目を向けてみる。
「おい、小娘!断るとはどういう了見だ!?」
「民草のために攘夷を論ずる我ら志士に、酌のひとつやふたつ、むしろ自分からするのが当然であろうが!」
視線の先、二人の浪士が町娘に絡んでいて、難癖をつけているらしい。
昼間っから酒飲んで酔っ払ってる奴らに攘夷だなんだ語って欲しくねぇな。
「やめてください!離してっ!」
嫌がる少女の手首をひとりが掴み、悲鳴があがる。
「っ…!」
咄嗟に路地へ踏み出したら、それより早く直ぐ横を浅葱色が大きく抜けていく。
「やれやれ。攘夷って言葉も、君達に使われるんじゃ可哀想だよ。」