第9章 帰る場所
「ハァ…こんなとこに居やがったか…ったく、何してんだよ。部屋にお前が居ないって屯所中大騒ぎだぞ。」
「…すいません…でも、俺…。」
「悩んでんだろ?」
「えっ…。」
「悪ぃとは思ったんだが、あの日お前の独り言、聞いちまったんだ。」
独り言…?
「人間じゃねぇ…ってのは、どういう意味だ?」
「ッ!?」
「話しちゃくれねぇか?池田屋事件から妙に元気ねぇから。」
左之さん、気付いてたんだ…俺に元気がない事…。
「…でも…言っても…迷惑かけるだけで…。」
「ったく…今更みんながお前のこととやかく言うかよ。いいから言ってみろよ。」
そう言って俺のそばに腰掛ける左之さんに、ぽつりぽつりと、風間さんに言われたことを話した。
「…俺、鬼、なんだそうです…。」
「鬼?」
「詳しいことはなんも分かんないっすけど…あの人、俺が異世界からやってきたこと、分かってるような口ぶりでした…。去り際に今度会ったら連れ去るとか言ってて…迷惑掛っぱなしなのに、これ以上迷惑かけるのも嫌だったんで…。」
「出ていこうとした、か?」
「…。」
申し訳無さすぎて顔を上げられない。
すると、頭に左之さんの暖かい大きな手が置かれ、驚いて左之さんの方を向く。
「…左之さん?」
「お前は、もっと俺達を頼れ。何のための仲間だ。新選組に居る限り、お前がどこから来ようが今はあそこが、お前の帰る場所だ。だから、一人で抱え込む必要なんてねぇんだ。」
ポンポン。と、優しく撫でられる。
目頭がまた熱くなる。
「…ですか…俺が…俺みたいなのが新選組に居ても…いいんですか…?」
「当たり前だ。」
「…っく…ひっ…う、うわぁぁぁ!」
その言葉を聞いて、喉につっかえていた何かが取れたみたいに左之さんの胸にすがりつくようにして泣いた。