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日常から非日常へ 【薄桜鬼】

第9章 帰る場所


夜の京の町を一人、なんの宛もなく歩き続ける。

「一人ってこんなに寂しかったんだな…。」

いつもは隣に誰か居たっけか。

からかってくる沖田さん。
それを庇ってくれる千鶴ちゃん。
呆れながらもフォローしてくれる一君。
子供のように元気にはしゃぐ平助。
一緒になって騒ぐ新八さん。
いつも大人な対応の左之さん。
厳しくても優しい土方さん。
優しくて頼りになる近藤さん。
お父さんみたいな一面を持った源さん。
最初は怖かったけど本当は優しい山南さん。
俺の事情聞いた上でとても協力してくれた島田さんと山崎さん。

まだ数ヶ月しか経ってないのにみんな俺の事、本当の仲間みたいに接してくれた。
トリップなんて信じらんないようなことも今では手がかりが無いか必死に探してくれてる。

俺がここに来てから、一人になることがなかった。だから毎日がすごく楽しくて、辛くても周りが励ましてくれたからここまでやってこれてた。

「…っ…ひっく…っ…。」

涙が拭っても拭っても、止めどなく溢れてくる。
今が夜で良かった…。







俺は、一先ず傍を歩いていた土手に座りこれからのことを考えていた。
きっともうあそこには帰れない。
帰れる筈がない。黙ってきちゃったんだもん…。

「どうしよ…。」

すると、来た道の方から誰かが走ってくる音。
誰だろ…。
俺は目を凝らし、一応、刀に手をかける。
月明かりに照らされ、その姿が浮かび上がる。

「……左之…さん?」

額に汗を浮かべ、息を整えている、左之さんだった。

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