第8章 池田屋事件(弐)
ドクン…
「…ど、どこって…。」
心臓が痛いぐらいに早鐘を打つ。
すると、後ろから
「さっきから黙って聞いてれば…。」
俺を後ろにし、まるで守るように庇ってくれる沖田さん。その大きな背中に少しドキッとなった。
「お…沖田さん…?」
「あんたの相手は僕だよね?この子には手を出さないでくれるかな。この子がどこから来たのかなんて関係ないでしょ。」
すると、
「潤、沖田さん!」
「俺は大丈夫!それより、沖田さんを!」
駆けてくる千鶴ちゃんを手で制しながら沖田さんは風間さんを睨む。
急に窓側に歩き出し、
「なんの、つもり?」
「我々の目的は既に果たされた。このままここにいる必要はない。」
そう言えば、もう何も聞こえない…。
「また会おう、山中潤。次に会ったときは連れ帰る。」
気付けば、風間さんの姿はどこにも無かった。
「…はっ、沖田さん、大丈夫ですか!?」
俺と千鶴ちゃんの二人で沖田さんを支え、階段を降りていく。