【トリップしたけど…】テニスの王子様【どうするの?】
第23章 良く分からないけど……。
優しくそう言い笑いかけたのに、精市の顔が曇る。あれ?もしかして私、なにか失言した?
幸村「……なんで、泣いてるんだい?」
『……え?』
精市に言われ、自分のほっぺたに手を当てると、雫が指に乗る。
それを見て思った。よく分からないけど、辛い、悲しい、怖い……。
精市を心配させたくなくて、無理にでも笑って見せる。
『あ、あれ?
目にゴミでも入っちゃったかな?
やだなぁ…あはは……』
ゴシゴシと擦っても、目が痛くなるだけで涙は止まらない。やだ……なんで止まってくれないの?次第に嗚咽まで出てくる。
『っく……だ、大丈夫だよ?
ぅ………だか、ら……精市は…部屋に……………』
幸村「っ大丈夫。
俺がいるよ。
泣いてもいいんだ」
『な、に……言ってるの?
わた、し……ふぇ…泣いて……ない、よ…』
幸村「大丈夫だから。
俺の前では強がらないで……。
お願いだ…」
精市は、なんでそんなに優しいの?
優しく抱きしめて、優しい声で私を甘やかして……。そんな事されたら、もう涙止まんなくなっちゃうじゃん。
でも、強がりはさせてね?例えどんなに涙が出ようが、弱音は吐きたくないの。
ましてやマネージャー同士のいざこざに精市を巻き込みたくない。そんなの私が許さない。
『うっ……大丈……夫…。
ごめ…ね……せ、いち……』
幸村「……今は泣いていればいいよ。
俺が支えるから…」
『う……わぁぁ……ん…!
ひっく……うぇ……………』
たとえ私がこの世界の住人じゃなくても、今はまだここにいたい……。
精市のそばにいたい……。
ただ精市に抱き着きながら、誰に言ってるのかもわからぬまま、そう願い続けた。