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相合い傘

第1章 戦国無双4/藤堂高虎


珠実は本能の声を絞り出した。
小さな声だった。



「私を、抱いてくれませんか」



雨に濡れる高虎に優しく寄り添い自身の体を預ける。
心音が高まる。


高虎は、か細い彼女の声は、奥方様の願いは聞き間違いじゃないのかと思う。
だが寄り添う珠実を抱きしめた。抱きしめたかった。
自身が尽くしたい人は、この人なのだと思った。

珠実は背を伸ばした。高虎の薄い唇に優しくキスをする。
その唇は雨に濡れてもなお、暖かかった。
キスはするりと滑った。

高虎は珠実の少し濡れた、艶やかな髪を撫でた。その顔を抱き寄せた。



このまま、さらってしまいたい。












「傘を、お持ちいただけますか」

珠実はゆっくりと傘を受け取った。
その時、彼の長い指に手が触れる。
それだけで、鼓動が高鳴る。



高虎は珠実の手を引きゆっくりと歩き出した。
高虎は雨に濡れていく。
珠実は傘を差し出そうとする。
俺はいいと、彼は先に行く。
珠実は手を引かれるままに付いていく。
2人が迷い込んだのは、人の気がない路地裏だった。






高虎は壁に寄りかかると、珠実の持つ傘を奪う。空いた手で、彼女をぐっと抱き寄せる。
彼女の頭に顔を埋める。先程から埋もれたかった、匂い。


高虎は彼女のアゴをくいと上げると、その唇にキスをした。
彼の高い鼻が何度も肌に触れる。
優しいキスを、何度も重ねる。


優しさなんていらない。
焦らさないで。



珠実は高虎に両手に回し、自らキスを求めた。
キスは段々と激しくなっていく。
彼の舌は私のそれを逃してはくれない。
彼の手が私の胸元に伸びた。
彼の唇が首筋へと伸びる。
彼の耳を、優しく噛んだ。





珠実は、遠い遠い世界に堕ちていく。
2人を覆う傘を叩く、激しい雨音だけが現実だった。
ボタボタと奏でる音が耳に刺さる。
このまま、この世界に溺れてしまいたい。



快楽に堕ちていく。
神様どうか、罰は私だけに。



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