第5章 短編詰め合わせ✳︎
あなたとこんなにも、溶け合うだなんて。
「GRAY」
「おつかれさまでした!」
練習を終える。
6月の地区予選を控えた、3年目の春。
外はあいにくの雨。
室内コートでの練習を終え、テニス部の私は今日の予定を決めた。
いや、決まっていた。
海南大付属高校。
ここはスポーツの強い人たちが引き抜かれ、集まっている。
設備も最新のものが整い、スポーツに青春をかける者にとっては文句無しの学校だ。
珠実は昨年の夏より、練習の後はいつも自主的にランニングをしている。
「珠実先輩、今日雨ですけど、走ってくんですか?」
「うん」
今日は雨。ランニングマシンを利用する。
トレーニングルームは第2体育館の奥だ。
珠実は体育館のドアをそろりと開ける。
罵声とも取れるような声が飛び交い、男たちの汗が舞い散る。
第2は大所帯の男子バスケ部が、全てのスペースを利用している。
バスケ部監督で、担任の高頭先生に挨拶をする。
先生は授業中からは想像できない大声を張り、鋭い目で生徒たちを見つめる。
「高頭先生、こんばんは。いつも遅くまで練習してるんですね。きっとバスケ部の帰りが最後ですよ」
「ああ。奴らを勝たせたいからな」
クラスメートの牧紳一と、目が合った。
仲がとても良いのではないけど、彼は勉強もできて、感じも良い。教室では言葉を交わす。
私は彼に手を振る。
彼は襟元で汗を拭いながら手を挙げ返事をすると、すぐに駆け出した。
さあ、私も走りだそう。
「牧さん、さっきの美女!誰すか。女バスですか」
「テニス部の、クラスメートだ」
「テニス部!?あんなに色白なのに?」
「... ... いいから集中しろ」