第5章 短編詰め合わせ✳︎
私には夢がある。
「たまの踊りは、すっごい魅力的だぜ。今回はたまたまさ。またがんばろうぜ」
ジタンは珠実の頭を撫でる。
彼はいつも、励ましてくれる。
「こんな日はぱーっと飲もうぜ!」
ジタンはぐっと自分のサングリアを飲み干す。
「マスター、同じのもう一つと、スペシャルカクテル、1つね」
2人は2杯目を乾杯した。
彼はサングリアを。
私はマスター特製カクテルを。
ジタンと出会ってからは、夢のため、大好きなお酒は体に良いサングリア1杯までと決めた。
その後は、マスターが私のために開発してくれた体に優しいノンアルコールカクテルを頼む。
「このテーブルがなんで残してあるか、知ってるか?」
「マスターの更なる野望のためでしょう?」
「それもある。でももう一つ」
ジタンは珠実の耳元でささやく。
「... ... 嘘」
「本当さ」
私の夢が叶ったら、取り払うって。
それまでは、共に夢を追いかけようって。
胸が軋む。
こんなにも応援してくれる人がいるのに、自身の不甲斐なさに落ち込む。
「なんで落ち込むんだ。一緒にがんばろうとしてる仲間がいるってことだぜ」
彼の瞳が、笑顔が、眩しい。
ジタンは、どうしていつもキラキラしているのだろう。
「ジタン。あなたに夢は、あるの?もう、叶えられた?」
なぜ、そんなに眩しくいられるの。
「俺の夢はーーー」
その刹那、ジタンの顔が曇った、気がした。
「もう、叶ってるぜ。こーんな美人と飲めるんだから」
気がつくといつものおちゃらけた彼が目の前にいる。
唇が触れそうな距離。
「はいはい」
私は彼の頬をつまんだ。
不思議だ。
落ち込んでいた気持ちが、彼といると柔らかくなってゆく。