第3章 戦国無双/石田三成
三成は燭台に灯る明かりを消した。
辺りは暗闇に包まれる。
三成は慣れたように珠実の側まで行くと、ほらと手を差し伸べた。
珠実は手探りでその手を握る。
暗闇で、転ばないように。
三成は珠実の手を引きながら障子を開けた。
頭上に広がる雲一つない空には、満天の星たちが浮かんでいた。
小さな星屑たちまでがはっきりと輝き、川を作っている。
珠実は息を飲んだ。
「... ... 息が詰まりそうなときは、この空をよく見上げている。こんな日に限って、一段と美しいのだな」
三成は縁側に腰掛ける。
珠実もその隣に座る。
三成が繋いだままの手を離そうとすると、珠実は嫌がりその手を掴んだ。
手を離したら、広大な暗闇の中に三成が消えてしまうような、見えない不安に襲われた。
三成はそっと、その手を握り返した。
「 ... ... 先ほどはすまなかった。俺が言いたいのは、大事なものを武や知で守ってきた俺たちと、内助で支えてきたお前では、思うことも違うということだ」
「そんなこと関係ない。だって、4人はいつも一緒だった」
「お前も馬鹿だな」
三成は繋いでいた手を解き、珠実の頭に優しく手を触れる。
「お前にとっては、俺たちは皆同志かもしれない。だが俺たちにとって、お前は守るべき大事な姫だ」
珠実は初めて耳にする話を受け止めようと、暗がりの中、三成を見つめる。
「そのためにくだらん喧嘩をしたこともある。お前には、解らないこともある」
珠実は動揺する。
今まで同志だと思っていた関係が、見えていた世界が、変わるのだ。
この感覚。
あの雨の日、三成と2人きり、傘の下の世界を思い出す。
あの日見えた異世界は、三成が見ている世界の断片だったのだろうか。
十人十色、皆が見てる世界は、想いは、違うのに。
言われぬまで分からぬ私は、鈍い。
「... ... 秀吉様の世を守るため、清正と正則には地方を治めてもらう。そのためにお前に辛い思いをさるのならば、すまない」
本当に辛いのは、あなたなんじゃないだろうか。
だけどあなたはいつでも、自分のことよりも大切な人を、想っている。